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トランセンドとは?

ヨハン・ガルトゥングという平和学者・実践家は、紛争当事者との対話における長年の経験から、紛争解決ではなく、紛争転換という考え方を編み出しました。
それは、交渉という手段のみによって、双方の対立の妥協点を調整するのではなく、対立・矛盾・紛争そのものから飛躍して、新しい創造的な解決法(転換法)を探し出すという方法なので、「超越法」 (Transcend Method) という名前になりました。

たとえば、

オレンジが1つあるとします。このオレンジをめぐって、2人の7歳の男の子がいるとします。
この子たちは、どのような反応をするでしょうか。もし、2人ともオレンジまるまる1個を
手に入れたいと思ったならば、取り合いになるでしょうか。
取り合いになったとき、もし、口ゲンカや殴り合いのケンカが発生したとしたら、大変ですが、
そういうことも現実には起こりえますね。
こういった暴力的な手段によって「解決」がもたらされた場合、つまり、一方の男の子が
オレンジを1つ手に入れた場合、それは、「一方の勝利」(表では●の点を指します)となります。
これは、平和学的には、望ましい解決法ではありません。

では、平和的な解決法とは何でしょうか。
2人は、1つしかないオレンジを半分こすることにするかもしれません。ナイフで切り分けるか、皮をむいて中身を分け合うか、するかもしれません。もともとは1個まるまるほしかったのですから、結果は「妥協」です。50%の満足度ですね(表では★の点を指します)。

あるいは、2人は、このオレンジをめぐって対立することを避けるかもしれません。
対立することより、波風が立たないことを選択するのです。この場合は、紛争そのものを回避するという意味で、「撤退」とか「逃避」と呼んでいます。消極的な解決法ですが、意外と、重要な役割を果たすことも多いのです。特に、お互いに暴力手段に打って出ようとする場合には、暴力を予防する効果があります(表では○の点を指します)。。

しかし、2人は、もっと創造的に問題を転換しようとするかもしれません。
オレンジが1個しかないのなら、仲よく模写してお絵かきを楽しんだり、オレンジをボールに見立てて、キャッチボールをするかもしれません。
もう1つ、オレンジを買ってきて、1人に1つずつ分けっこするかもしれません。
あるいは、1つのオレンジでも、オレンジジュースを絞って、寒天を混ぜ、ゼリーを作ったり、
小麦粉や砂糖を持ってきてオレンジケーキを作ったりするかもしれません。
そのとき、2人だけじゃなくて、他のお友達を誘って、お料理を楽しむかもしれないし、
ケーキを囲んで、誰かのお誕生日をお祝いするかもしれません。
残った皮の部分は、ポプリにしたり、砂糖漬けにしてチョコをまぶしてデザートを作るかもしれませんね。
最後に残った種は、土に植えて、オレンジの木を育てるかもしれません。数年後には立派なオレンジがたくさんなるでしょう。その間、2人は、家族や友人を巻き込んで、一緒に育てるかもしれないし、世界では食糧難で苦しむ子供たちがいることを学校で勉強したことを思い出し、たくさんのオレンジを売って得た収益を「NGOオレンジ基金」という団体を設立して、そういった子どもたちのための国際協力をする活動を始動するかもしれません。
これは、「超越点」と呼ばれます(表では☆の点を指します)。
超越点とは、もともとの目標が満たされるだけではなく、それ以外のさまざまな「副産物」が生まれることにこそ意味を見出します。たくさんのオレンジをたらふく食べられるだけではなく、友情が芽生え、NGO活動が活発になるのです。

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